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いつの時代もファッションはスタイルの象徴たるミューズやアイコンを欲しがるもの。しかしこの春夏のグラフペーパーにインスピレーションを与えたのは、ステージ上のロックスターでも銀幕のヒロインでもなく、街を行き交う名前も知らない人々でした。ディレクターの南貴之は世界の都市に足を運ぶ中で、気づけば自然とそうした人たちを目で追うようになったのだとか。彼らの無意識的な装いと、そこに見出した面白み。漠然とした感覚は可視化され、グラフペーパーの新たなコレクション、“REMNANT”はできあがりました。

Interview & Text_Rui Konno

―今季のシーズンテーマの“REMNANT”ですが、“残りもの”だとか、そういうニュアンスがある言葉ですよね?

うん。だけど別にネガティブな感覚は別になくて。簡単に言うと、特に男性像で言えばオジサンっぽいとか、そういうイメージです。紳士的とも言えるのかもしれないけど。海外に行くと、ジャケットにキャップでラフなズボン…みたいなオジサンを結構見かけるんだけど、そういう人たちが着想源です。

―それはファッショニスタというより市井の人ですよね?

そうそう。俺自身はファッションの人たちよりもそうやって街の人を見て格好いいなと思うことが多くて。観察してるうちにそういうオジサンくささみたいなものをグラフペーパーなりの考え方だとか、素材づかいでつくり込んでいったらどうなるかな? と思うようになって、それが今回のテーマになった感じです。

―なるほど。確かに全体を見ても生地のテクスチャーが従来とはまた少し違いますよね。

素材のイメージで言ったら’90年代の(ジョルジオ・)アルマーニとか、そういうのを意識してました。春夏ということもあって、少し男らしいリゾート感があるものが多いかも。今の日本の夏は暑いから清涼感はありつつも、少しクラシックに見えるようなものがいいなと。少し前にオランダに行ったんだけど、そこで見た建物の色がすごくかわいくて、色味はその辺りがベースになってます。自分でパントンを選ぶときにそのときの写真を見直したりしながら。
―ちょっとくすんだ色が多いのはそういう理由だったんですね。今回はルックのビジュアルもいつものような立ち姿じゃなく、動きのあるものになってますね。

うん。素材感が軽やかなものが多いから、モデルも動かしたほうが質感がわかりやすいかなと思って。さっき話したアルマーニみたいな男性像は昔から好きなものではあるんだけど、イタリア人的なセクシーさというよりは、もう少し日本人の忍ぶような感覚でそれをやりたいなと。

―具体的なコレクションはどうやって形になっていたんですか?

生地をつくるところからだね。その生地をどういうデザインに落とし込んでいくかっていう。つくり方自体はいつも通りです。今回はほとんどの生地を何かしらの方法でメランジにしていて。織りや編み、糸自体の撚りとか、やり方はそれぞれ違うんだけどよく見るとほぼ全部がメランジになってます。そうじゃないのはスエードくらいかな。

―ここ数年、春夏でもレザーのアイテムが入ってくることが多いですよね。
- レザーのフーディとヌバックのシャツ

グラフペーパーだとレザーの需要が多くて、春夏にも革モノをつくるっていうのが定例化してきたような気はしてます。今回はそこに、オジサンくささにはスエードとかヌバックが必要だろうという気持ちも加わって。このプルオーバーとかは、「レザーのフードってかわいいよね」みたいな話から始まりました。シンセティック(レザー)でやろうかという話にもなったんだけど、それだとちゃっちくなりそうだからリアルレザーでやろうと。これは女の人が大きめで着てもかわいいよなと思ってます。

―同じオジサンくさい服でも、女性が着るとまた新鮮味も違いますよね。

うん。素材感だけメンズと合わせていて、オジサンっぽい生地を女の人が着るのもかわいいし、そこに抜け感とエレガントさがあるといいなって。ゆったりしたシルエットのドレープの出方とかはメンズとも共通するところだけど、そこにレディスはシアーなニットが入ってきたりします。
―さっきのメランジの話ですけど、布帛をシンプルな単色にしなかったのは立体感を求めてのことだったんですか?

それもあるけど、“オジサンくさいもの”をキーワードに考えたときに、杢調っていうのが自分のなかに浮かんできて。それで、ほとんどのものを杢でつくってみたら面白いんじゃないかと思って、機屋さんとそういう話をしてつくり始めました。この生地とかは、意外とあんまり世の中になかったんじゃないかなと思います。

―触ってみてとろみと弾力があってすごく不思議だったんですが、これは混率で言うとどういうバランスなんですか?
リネンが64%、キュプラが36%ですね。スーツの裏地に使われるような光沢のあるキュプラを、あえて節立ったリネンと合わせていて。古着屋で出てくる昔のオヤジが着てたドリズラーとかに使われていそうな生地にしたくて。

―結果的に味わい深いですけど、インスピレーション源を聞くとなんだか冴えない印象ですね(笑)。

そうだね(笑)。それをもうちょっといい素材に置き換えたような感じ。このチャイナジャケットも、デニムみたいに見えるけど実は杢になっていて。いい意味で変な生地になって気に入ってます。
―でも、杢調になってくると糸自体を染める段階とは別に、複数の色が組み合わさってさらに複雑なトーンになっていくわけですよね。その着地ってはっきりと想像できるものなんですか?

やってみるまでわからないことが結構多いです。糸の段階で見て、これを組み合わせたらどうなるかっていうのは織ってみないとわからない。薄く見えるか濃くなるか、どっちに転ぶんだろう? とか。これとかも、織り自体は普通のスーツでありそうな生地なんだけど、ウールで杢っていうのを今まであまりやってこなかったから実は新鮮で。
今回はそういうちょっと変な生地が多いから、もしかしたら好き嫌いも結構分かれるかもしれないですね。この辺の生地とかもそれこそ昔のアルマーニっぽさがあるんだけど、全部がウールじゃなくて化繊が入ってるから軽くて乾きやすいんですよ。それが結構特徴的ですね。すごくオヤジくさい柄でもあるんだけど、面白いかなと。

―ドビーストライプというか、そんな柄ですよね。

そうそう。柄を変えたりしながらグラフペーパーでは通年やっていた組成ではあったりするんですけどね。経緯にどんな糸を入れていくかで、それも変化していくから。

―あんまりオリーブグリーンみたいなトーンで杢調って見かけない気がします。

そうかも。でも、海外に行って古着屋を覗いたりすると、こういういい感じに野暮ったい色のパンツとかがたまに出てきたりするんですよ。とは言えグラフペーパーは現代の都市生活のための服だし、クラシック回帰というよりはミニマルに削ぎ落とそうと考えながらつくってはいますけど。ただ分厚いとか重たいとか、見栄えがオジサンくさいだけだったら、ウチでやる意味がないから。自分自身が着づらい服は好きじゃないし。

―やっぱり快適さは重視されていると。でも、そんな中でも足元がスニーカーだけじゃなく、レザーシューズも加わっているのは顕著な変化ですね。
結構前から竹ヶ原(敏之介)くんと「革靴をつくろう」っていう話はしていて、このタイミングでグラフペーパーの定番として一緒に開発しようとなりました。レディースの靴もずっとつくりたかったんだけど、ウチのスタッフでもやっぱり竹ヶ原くんの靴を履いてる子が多かったから。

―全体のアプローチは見えてきましたけど、南さんにとってオジサンくささの魅力ってどんなところなんでしょうか?
野暮ったさなのかな? なんなんだろうね…あれは。でもオジサンじゃなきゃ出せない味っていうのはやっぱりあると思います。自分も年を重ねて、昔だったら着ても似合わなかったようなものが今は普通に着られるなとか、そういうことを感じたりすることは結構多いし。ただ、今回のグラフペーパーについては考え方の始まりがそういうところっていうだけであって、若い人が着たらちゃんと普通に映えると思うけどね。あんまり特別にそれを意識しないで着てくれたらなって。

―トレンドが生まれても一瞬で共有されてしまって、ブランドや服の数は膨大にあるのにハッとするようなスタイルや着方みたいなものが生まれにくい現代にあって、街のオジサンのスタイルは予想外なことだらけですよね。

言っちゃえばたぶん、あんまり考えてないんだろうね(笑)。ジャケット着とけばいいや、みたいな感覚なのかな。でも、俺自身にもグラフペーパーの服をこう着てほしい! っていうような気持ちはあんまりないんです。自分の格好も上下セットアップで中にTシャツとか、そんな感じで世の中のオジサンのことをとやかく言えないくらい、ほとんど考えてないから。

―しかし、今回のインタビューは過去一でオジサンというフレーズが出てきますね。

(笑)。ただ、今回形にしてみて感じたけど、思ったよりもオジサンっぽくはならないんですよね。かなり野暮ったくしたつもりでも、意外とモダンになったりして。まぁ、ブランドとしてはそうじゃなきゃダメだよなという気もするんだけど。そんな感じです。



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